傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
「これからよろしくお願いします」

 そう挨拶をしても彼女はだんまりである。
 相当最初の印象がよくないのだろうなと察した俺は、これ以上深入りしないことにした。……のだが。

 東京本社に初出社した日の夜、洗濯物を取り込もうとベランダに出た瞬間、一際強い風が吹いて干していたタオルが宙に浮く。
 必死に手を伸ばしてタオルを掴もうとするも、その努力も虚しく隣のベランダへと飛んでいってしまった。

「うわっ!」

 思わずあげた声に反応するかのように隣から微かに物音が聞こえた気がして、俺は思い切って声をかけると、仕切り板から身を乗り出した。

「ごめんなさい。俺の洗濯物、そっちに行っちゃったみたいで……」
「この青いタオル……ですよね?」
「それです、助かりました」

 急に話しかけたからなのか、彼女からはこの前のような近づくなオーラを感じない。

(いまなら話しかけられるかも)

 そう思って話しかけてみたら、彼女はぎこちないながらも俺の質問に答えてくれた。

(なんだ、普通に話せるのか……)

 控えめな相槌ではあるし、まだどこか堅さはあるものの、俺のことを邪険にするような素振りは感じない。

 俺は世間話のついでに、近くにおいしいご飯屋がないか聞き出すことに成功していた。
 ただ、お腹の音を聞かれてしまったことは顔から火が出るほど恥ずかしかったが。
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