傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
 そうした経緯もあって、結婚前提に付き合っていた彼女とは別れた。
 家族にも紹介したほどの仲だったため、親からはどうしてあんないい子を手放したのかと責められた。
 母は一番、俺の結婚を楽しみにしてくれていたようで、婚約の話が破談になったと知ったとき、誰よりも悲しんでいた。

 それからしばらくして立ち直ってからも、家族から結婚はまだなのかと急かされる始末。

 それが嫌で、いまでは実家に寄りつかなくなってしまった。
 だから、住み慣れた名古屋から東京へ転勤してほしいという話は俺にとって渡りに船だった。

(それに、いい隣人もいることだし……)

 俺にとって、彼女との会話は少々ぎこちないながらも癒しの時間だった。
 彼女がベランダへ出るときに聞こえる物音に吸い寄せられるように、俺も自然とベランダへ向かってしまう。
 雨の日だけ話せないのは物足りなかったが、その分、次に話したいことが増えるから、晴れの日を楽しみに待つことができた。

 そんな折、彼女が後輩から引き継がれた仕事でミスがあった。
 その案件は俺が監督している後輩の仕事でもあり、彼女のリーダーからその始末を任されたときは快く引き受けた。

 後輩の尻拭いは、先輩の仕事だ。
 なにより、彼女がなんとかしようと奮闘している。手を差し伸べない理由はなかった。
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