傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
 久しぶりに話しかけられたというのに、いろんなことが引っ掛かって素っ気ない態度になってしまう。
 私は彼と目を合わせることもなくパソコン画面を見つめたまま手を動かした。

「片瀬さんもそろそろ移動されたほうがいいと思いますよ。みなさん、もう行かれたので」
「そうするよ。でも、水嶋さんは大丈夫ですか? ひとりでこのまま残業を?」
「……はい。先ほど後輩から仕事が終わらないと泣きつかれてしまいましたので……。それに納期も間近なので、このまま仕上げます」
「あぁ、あの井上さんか……」

 彼も彼で井上さんの扱いには困っているのだろう。彼の声音にはうんざりした感情が入り混じっていた。

「そろそろ行かれては……?」
「うん。でもさ、俺はもう少し水嶋さんと話したいな。久しぶりな気がしますし」
「私は仕事が詰まっていますので……」

 そう伝えれば、彼もこれ以上は邪魔できないと察したのだろう。
 ごめんね、と言って下がっていった。

(最悪だ……せっかく話しかけてくれたのに)

 まるで突き放すような物言いに、我ながら酷いと思ってしまう。だけど、今のやり取りだって周りに見られているのだ。
 フロアから完全に人が出払ったわけではない。だから、用心するに越したことはないだろう。

 私は彼がオフィスから出ていくのを見届けてから溜め息をついた。
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