傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
07 障壁を乗り越えた先
 彼と想いが通じ合った日の夜、離れがたくなった私たちは、前回と同じように二人掛けのソファーに座り、眠くなるまで映画を見ていた。
 そうして寝落ちた日の朝は、飲み会終わりでアルコールが抜けていない彼と、泣き腫らした顔の私……という、お互いに酷い有様だったけれどこれはこれで良い思い出だ。

 朝のうちに彼と別れたあとはそれぞれのペースで一日を過ごした……のだけれど。結局、また恋しくなって日差しが暑くなったベランダでお喋りをしたのは彼との秘密だ。

 そうして週が空けた月曜日、申し合わせたわけではないけれど、彼と部屋を出るタイミングがかぶって、どちらからともなく近づいた。

「おはよう、水嶋さん」
「おはようございます、片瀬さん」

 今日の彼も完璧だ――と思われたけれど、背中からぴょんとワイシャツの裾が飛び出している。指摘すれば、彼が慌ててワイシャツの裾をスラックスにしまっていた。

「ありがとう。恥ずかしいところを見られたな……」
「ふふ、こういう抜けてる片瀬さんが見られるのは私だけの特権ですね」
「そんなふうに言ってくれるのは水嶋さんくらいだよ」

 いつもフロアに入る前はできる限りトイレで身嗜みチェックをするとのことで、毎朝何かしら気になる箇所が出てくるのだという。
 職場では抜けている瞬間を見ることがないと思っていたけれど、こうした影の努力があったのだと初めて知った。
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