傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
「寝癖直しありますけど、使いますか……?」
「え、あ、いいんですか? 今日はなかなか直らなくて……恥ずかしいな」

 最寄り駅につき、電車を降りて鞄の中からピンク色のスプレーを渡す。
 返すのは帰宅後でも大丈夫だと伝えて、私は彼と別れることにした。……のだけれど。

「なぜ俺の後ろを歩くんです……?」
「なぜ、って……。このままだと一緒に出社することになるので……」

 彼はたいそうモテるのだ。
 名古屋支社から異動してきて一ヶ月。女性社員たちが彼を見てきゃあきゃあと噂しているのを知っている。
 そんな中、一緒にいるところを見られたらどうなるか。
 根掘り葉掘り事情を聞かれるに違いない……。

「……わかりました。水嶋さんが気にされるのなら、ここで。ではまた夜に。スプレーもありがとうございます」

 私の考えを察したのか、片瀬さんは特に食い下がることもなく颯爽と先を歩いていく。

 また夜に、と言われたことが嬉しくて、私は浮き足立つ気持ちを押さえると気を引き締めて職場へ向かった。





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