傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
◇
「ここで会うのは初めてですね」
夜、スーパーで買い物をしていると、仕事終わりの彼と鉢合わせた。
会話をしたのは今日の朝ぶりだ。駅で別れてからは、仕事で接する機会もなく、特に会話をしていない。
仕事終わりの彼はネクタイだけを外した格好で、スーパーのカゴを片手にお弁当コーナーを物色していたようだった。
そのカゴの中にはトンカツとサラダが入っている。
彼は私の視線の先を追うと、カゴを後ろに引いた。
「なんだか恥ずかしいな、カゴの中を見られるのは……」
「片瀬さんは自炊をされないんでしたっけ」
「恥ずかしながら料理は苦手で……。フライパンをひとつダメにしてから、キッチンには立たないようにしています」
フライパンをひとつダメにするような失敗って、どんな失敗だろう……。
なかなか起きない失敗のような……。
「水嶋さんは外で食べないって仰ってましたよね。毎日、自炊を?」
「はい。節約のためにも、なるべく家で作ってますね」
「すごいなぁ……。料理の仕方を教えてほしいくらいだ」
「カレーとかなら簡単ですよ。今日もカレーにしようかなと思ってて」
「カレーか……。昔、焦がしてしまって、とんでもない味になったな……」