傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
「カレーとスプレーのお礼。ちょっとだけで、申し訳ないけれど……」
「そんな……! カレーの材料費だって払っていただいているのに」
「あれは労力に対してのお礼だから」

 気にしないでと言う彼のあとに続いてエレベーターを降り、駅までの道を歩いていく。

 すでに五月も終わろうとしているため、日差しが暑かった。十五分も歩いていると、じんわりと汗をかいてくる。
 ハンカチで汗を抑えながら歩く私の横で、彼もワイシャツを掴み、胸元をパタパタと仰いでいた。

「今日も暑いですね。まだ五月なのに」
「本当に……。営業さんは大変ですよね、外回りがあるから」
「まぁ、もう慣れちゃいましたけどね」

 駅の構内にたどり着き、改札を抜けて、ホームに滑り込んできた電車を眺める。

 今日も女性専用車両は満員だ。朝は乗れたためしがないため、仕方なく普通の車両へと移動する。
 彼は前と同じように私を通路の奥に入れてくれて、密着しすぎないように踏ん張ってくれていた。

「あの、もう少しこちらに寄っても大丈夫ですよ……?」

 そんなことを口にしたとき電車が揺れて、彼の胸に鼻先をぶつける。
 ファンデーションがついちゃったかも……! と、慌てて顔を上げたら、こちらを見下ろしていた彼と目が合った。
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