傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
 兄とは仲がいいほうだ。
 世間一般の兄妹よりも距離が近いという自覚がある。

 それは幼い頃に父を亡くし、兄が父親代わりをしてくれていたことと、母が私の成人とほぼ同時期に亡くなってしまったことが大きい。
 祖父母も既に他界し、親戚との関係も疎遠な中、この世に残された家族は兄である伊月だけだ。
 それは兄にとっても同じで、私だけが唯一頼れる家族でもある。

 だから兄はいまだに私のことを心配してくれて、何かと理由をつけて私に会いたがる。
 そのこと自体はとても嬉しいし、私も兄に会いたい気持ちもあるから受け止めているけれど、仕事終わりに部屋まで上がり込んでくるのはちょっとだけ迷惑である。

(だってお兄ちゃん、いつも酔っ払って帰ってくるんだもん……)

 終電がなくなったから泊めて、というのがいつものお決まりの台詞なのだ。
 普通に会いに来てくれたらいいのに、兄としては照れくさいのか、なにかしらの口実をつけて家にやってくる。
 今日もそうした理由があってわざと終電を逃したんだろうなぁ……と思うと、怒る気になれなかった。
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