傷付いた心を癒すのは 〜男性が苦手な私の心を癒してくれたのはお隣さんでした〜
 ニタニタと意地悪な顔で笑って私に近づいてくる剛人に、ぎゅうっと鞄を胸に抱き込む。

 怖い。近付かれるのも、触られるのも。
 指先が震えて止まらないのに、そのことに剛人も兄も気付いてはくれなかった。

「俺の可愛い妹になんてこと言うんだ! 葉月は誰からも相手にされまくりだよ」
「兄バカすぎだろ……。そんなんだから、葉月がいつまで経っても兄離れできなくてひとりになるんだろ。可哀想に」

 哀れみの目で兄を見た剛人が私に手を伸ばす。
 このまま腕を掴まれる――と思ったところで、横からぐいっと肩を抱き寄せられた。

「……駄目ですよ。葉月さんは、俺の彼女なんですから」
「……へ?」

 驚いて彼を見上げる。口元には笑みが浮かんでいたけれど、目はまったく笑っていなかった。

「は? でもさっき会社の同僚って……」
「ね? そうだよね? 葉月」

 有無を言わさぬ圧を感じて、私はこくこくと首を振る。
 彼は、部屋の鍵を、と耳元で私に囁いた。

「彼らに鍵を渡してあげて」
「は、はい……」

 言われるがまま鞄の中を漁り、部屋の鍵を彼の手のひらの上に置く。
 彼はありがとうと優しい声音で囁くと、その鍵をあろうことか兄に手渡した。
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