道しるべみたいな恋だった
ある日の昼休み後の授業。友達と廊下でおしゃべりをしていて、チャイムが鳴り終わってすぐに慌てて、席に着いた。

廊下を走ることすら基本的にしないのに、慌てて走りすぎて息が切れて、肩が大きく揺れているのが自分でもよく分かる。
 
そして、前の席の松木が振り返る。

(ああ、絶対に校則違反って言われる……)

そう思っていたのに、彼から飛び出してきたのは予想外の言葉だった。

「大丈夫だから」

きっと、そこで恋になったのだと思う。

まだ未熟で幼い私にとっては、それが全てだった。
 
淡い恋になった時から、もう校則違反を指摘されても嫌じゃなくて、むしろただ彼と話せることが嬉しかった。

「それ、校則違反じゃね?」

「違うってば!」

前より笑顔で楽しくそう返すようになった私に、きっと彼も気づいていた。

だって、恋心の隠し方すら知らなかったから。

それでも、あの未熟な恋は両思いにならなかった。恋心を伝える勇気もなかったし、きっと彼は私のことなんて好きじゃなかった。
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