道しるべみたいな恋だった
「ねぇ、課長から聞いた? 忘れられない恋の話」

「聞いた。やばいよね。私、元カレに浮気されて捨てた話でも書こうかな」

「じゃあ、私はピュアな高校生の頃の自分で」

「あんたにそんな時代ないでしょ」

「はぁ!? ありますー」

四人がけの丸テーブルを囲うようにして座り、それぞれが小さな可愛らしいお弁当箱をつつきながらエピソードに花を咲かせている。

それをコンビニのサンドイッチを(かじ)りながら聞く私は、「あははっ」と適度に笑いを入れながら相槌を打っている。

(なんでみんなそんなに充実したエピソードがあるの……)

心の中はそんな考えでいっぱいだ。華奢な身体に可愛いらしい顔立ち、そしてお洒落なメイク。

私がこの場に馴染むためだけに覚えたものを、彼女たちは平然としているように見える。

それとも、彼女たちも私と同じように浮かないように頑張っているだけなのだろうか。

今、話しているエピソードも作り話だったりしないだろうか。
< 2 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop