道しるべみたいな恋だった
その日の終業後。

私は会社の自販機で缶コーヒーを買って、誰もいない休憩室の椅子に腰掛けた。
 
仕事が終わっても帰らずに、休憩室で缶コーヒーを飲むのは初めてだった。

日中と違い、ライトがついていてもどこか薄暗い休憩室で少しずつ缶コーヒーを飲んでいく。

『相川』

もう声すらしっかり覚えていないのに、彼に名前を呼ばれた瞬間の映像の記憶だけが見えた気がした。

そして、忘れられないのは……ある夏の記憶。
 
制服に身を包んだ自分が彼の後ろの席に座っている。

いつも彼の後ろ姿だけを見ていた、訳ではなく……彼は何故か頻繁(ひんぱん)にこちらを振り返り、意味の分からない文句を私につけてきた。

「リボン曲がってね?」

「え……」

顔を下に向けて胸元を確認すると、確かに少しだけ曲がっているリボン。

まぁ指摘されたしな、くらいの気持ちで直そうとした瞬間に、彼はさらに続けるのだ。
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