サイコ医局長の検体


「貫アヅさん! 奇遇ですね。もしや今からお昼ですか? よければご一緒しませんか?」


事務の制服である白いシャツに、タイトなスカート姿の亜月。

お尻の出具合を見つめられて、『嗚呼絶景かな』などと思われているとは全く思わない亜月が、ゆっくりと振り返る。


「十三郷先生、お疲れ様です。私はこれから外の蕎麦屋に行くところなんで申し訳ありません。」

「ああ、十割蕎麦の『勝屋』ですか? いいですねえ、僕も蕎麦食べたいと思ってたところなんですよ。」


十三郷の腕に絡みつく看護師が顔をしかめる。

麺類はカテーテルのようで嫌だと言っていた癖に。なぜ蕎麦は許されるのだろうかと。


「十三郷先生、外で食べてる暇あるんですか?」

「ええありますよ。」

「それでしたらそちらの看護師さんもご一緒にいかがです?」


空気を察した亜月が、すかさず看護師を蕎麦に誘う。

全く面識のない看護師だが、十三郷の腕に絡みついている以上、誘わないわけにもいかない。なにせ自分を睨んでくるのだから。


「う〜ん。いいですけどお、十三郷先生が奢ってくれるならいいかなあ、なんて♡」


かわいく首を傾げる看護師が、十三郷に上目遣いで『おねだり』をする。

すると十三郷が目を細めて、柔和に微笑んだ。

「すみませんが、今月僕ピンチなんですよねえ。自腹じゃないならあなたは来ないでいただきたい。」

「ええ〜! 先生って独身ですよねえ? そんなにキャバクラにお金溶かしてるんですかあ?」

「そうですね。僕は爬虫類マニアでして、自宅ではアルマジロトカゲを10匹飼育していますので、その維持費にお金がかかるんです。」


看護師の顔が引きつる。

こいつキャバクラ狂いじゃない。ただの奇人だ。

思わず絡めていた手を離した。







< 9 / 18 >

この作品をシェア

pagetop