夜明けみたいな恋だった
どうしてそんな心にもないセリフを返してしまったのか。
こどもならこういうのが好きだろう、という伯母さんの目論み通りに、まんまと大よろこびしてしまうのが恥ずかしかった?
それとも、『ほしい!』とガっつくのは、みっともないとでも思った?
あるいは、ピンクのヘアゴムを手に入れられなかったときに悔しい思いをしたくなくて自衛した?
あの当時の気持ちは、自分でも説明できない。
理由は何であれ、私にはどうしても素直になることができなかった。
従姉妹たちは何度も私の名前を呼んでくれた。
が、一向に動かない私に、とうとう最年少の従妹が痺れを切らした。
「『いらない』って言ってるんだから、私たちで分けようよ」
従姉たちは困り顔。
そこで母がついに口を開くのだった。
「愛莉のことはもういいわ。放っておいて。姉さん、ごめんなさいね」
ピンクのヘアゴムは早々に従妹のものとなった。
当然の帰着だ。
にも拘わらず、哀しかった。
帰り道、車を運転しながら母はブチブチと言った。
「『ありがとう』って、素直にもらえばいいものを。可愛げのない子ね」
「可愛いくなくていいもん」
「本当に愛莉は受け取り下手ね」
母は大きくため息を吐いた──