夜明けみたいな恋だった
賭けのアイスは、翌週になって一緒に購買まで買いにいった。
「俺はこれで」
「じゃあ、私はこれにする」
私は流星のアイスを、流星は私のアイスを買った。
何のことはない。
これでは、奢りではなくただの物々交換だ。
「これなら、自分で自分の好きなアイス買うのと同じじゃない?」
ポツリと漏れてしまった身も蓋もない本音。
それに対して流星は、『全然同じじゃないよ!』と予想以上の熱意をもって反論してきた。
「自分で買ったアイスは、ただのアイスなわけね。でも、誰かが買ってくれたアイスっていうのは、その分の付加価値がついてきて、余計においしく感じるんだよ」
そう言って、流星は私が購入したアイスをひと口かじって、『ほらな!』と勝ち誇った。
そんなふうに考えられる流星を羨ましく思いながら、私も流星が買ってくれたアイスを口に入れた。
ゆっくり溶けて、口いっぱいに広がる。
と、流星が期待に満ちた目で私のほうを見ていることに気がついた。
「それと、俺の奢りのアイスを『おいしい』って食べてくれたら、奢った俺のほうもうれしい気持ちになる!」
『おいしい』以外は言わせないという圧を感じた。
「……すごくおいしいよ?」
「なっ!」
強制された『おいしい』だった。
けれど、それは嘘ではなかった。
実際、すごくおいしかったのだ。
無理やり言わせてくれてよかったと思った。
「これも、奇跡の79点のお陰だな」
「あのときはびっくりした!」
「俺なんか鳥肌たったもんね」
「あの日は楽しかったなあ」
「俺も俺も」
私たちは同時にアイスをかじった。
甘くて冷たくて、特別においしいアイスを。
しばらくは無言で食べ続けていたけれど、流星がおもむろに口を開いた。
「なあ?」
「ん?」
「今度……」
私たちはふたりで遊びに行く約束をした──