夜明けみたいな恋だった
そんな流星でも、受け取ってもらえないことはあった。
その日は流星プレゼンツの映画デートを終え、帰るための電車に乗っていた。
休日の夕方。
それなりに混雑していたけれど、始発駅から乗り込んだため、並んで座ることができていた。
私が一生懸命映画の感想を語っていた途中で、流星が『ちょっとごめん』と言って遮った。
そうして立ち上がって、前に立っていた女性に声をかけた。
「座ってください」
女性は妊娠していた。
「いいえ、もうすぐ降りるので大丈夫です」
妊婦さんは、吊り革に捕まっていないほうの手を小さく振った。
「……そうですか」
流星は座り直すと、すぐに私のほうを向き、何事もなかったようにまた会話の続きを促してきた。
「それで?」
でも、そのほんの一瞬前に流星がガッカリしたのを、私は見逃さなかった。
(遠慮しないで座ってほしかったなあ。そのほうが流星だってうれしかったと思うのに……)
そう思うと同時に、そう思った自分に驚いた。
(あれ⁉︎!?)
だって、流星と付き合う前の私なら、遠慮した妊婦さんのほうに共感していたはずだ。
それどころか、小さい頃の私なんて、好意を遠慮するなんてものじゃない。
思いっきり無碍にしてきたのだ。
(その私が残念に思うだなんて……)
伯母さんのヘアゴムやそのほか数々の受け取れなかった好意を思い出す。
(受け取ってたらどうなってたのかな……って、そんなの考えるまでもないじゃない!)
眼前が開けた気がした──