クソ真面目なアイドルに、幼なじみの一途が重症です。
4話
けれど、
その甘い自覚が「痛み」に変わるのに
時間はかからなかった。
休憩を終え、屋台に戻ろうと人気のあまりない神社裏を歩いていた時のことだ。
少し前を歩いていた暁が、誰かに呼び止められた。
「あの、早瀬くん……!」
声の主は、私のクラスでも「可愛い」と評判の暁と同じクラスの女の子だった。浴衣姿で、顔を真っ赤にしてモジモジしている。
私はとっさに木の陰に身を隠してしまった。
(これって、もしかして…)
「ずっと前から、早瀬くんのことが好きでした! もしよかったら、私と付き合ってください!」
静まり返る中、
女の子の震える声が
やけにハッキリと聞こえた。
(だめ、暁。断って。お願い……)
無意識の中で必死に、そう祈る事しかできなかった。
でも。
暁は少し驚いたように目を丸くした後、照れくさそうに首の後ろを掻いた。
「……俺でいいなら」
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
暁が、少し照れたように笑っていた。
私に向けられた事なんて、1度もない
初めてみる暁の顔だった。
ズキッ。
胸の奥を、鋭い針で深く刺されたような痛みが走った。
息がうまく吸えない。涙が溢れそうになって、私は音を立てないように必死でその場から逃げ出した。
私は暁が好きだ。
でも、暁にとって私は「ただの幼なじみ」であり、家族同然の存在でしかない。
さっき『彼女』って言われて、知らぬ間に自惚れていた。
でも、一番近くにいるのに、彼女という「特別なポジション」には、絶対に選ばれないんだ。
ー翌日-
暁は、昨日までと全く同じ態度で私に接してきた。
「おはよ。もも、お前昨日どこ消えたわけ?」
いつも通りに私の頭をガシガシと撫でるその手が、今はとてつもなく残酷に感じられた。
変わらない優しさが、今は何よりも痛い。
いつもの調子で「おはよう!」って返したいのに、言葉がでてこない。
このままじゃ、私はおかしくなってしまいそうだった。