クソ真面目なアイドルに、幼なじみの一途が重症です。
「ねぇ、暁」
「ん?」
学校へ向かってる途中、意を決して口を開いた。
「昨日、告白されてたでしょ。付き合ったの?」
付き合ったかどうかなんて、見ていたから知っているのだけど、暁の気持ちを聞いてみたくなったのだ。
「お前見てたのかよ」
「だって…歩いてたら目の前で急に告白が始まったんだもん」
「それで逃げ帰ったわけ?」
「さずかに気まずいでしょ!」
「だからって一人で帰るな。危ないから」
暁は少し呆れて、でもいつもの様に私の事を心配してくれている。
その優しさが今はどうしようもなく、もどかしく感じてしまう。
「…ごめん」
私がぽつりと謝ると、一瞬沈黙ができた。
暁は私の質問に答えるか、少し悩んでいるようにみえる。
「…で?付き合ったの?」
沈黙を破り、暁の方を見てもう一度きいてみると、暁もこちらを見て、はぁと小さくため息をついた。
「…付き合ったよ。俺も気になってた子だったし」
ドクン
「気になってた子」その言葉を聞いて、心臓が大きく脈打ちだした。
そして頭の中で、昨日のあの光景がフラッシュバックする。
中学の時も、彼女がいた事はあったけど、「告白されたから」と、どこか冷めた様子だった。
でも、今回は違う。
今私の目の前にいる暁は、少し照れているのか、それが悟られないように、口元を片手で隠して、私から目線を逸らしている。
それは誰がどう見ても、
1人の「恋をしている」男の子だったのだ。
ずっと家族みたいな距離感で、いつも近くで見ていたはずの暁。
こんな表情も、見たのは初めてだった。
昨日から、そんなのばっかり。
「…っ」
それは、暁への恋心に気付いてしまった私には、あまりにも残酷な現実。
(そんな顔、見せないでよ…)
なるべく暁の方をみないように、足元に視線を落とす。
少し顔を下げた事で、自分が今泣きそうなことに気が付いた。
いつの間にか溜まっていた涙が、零れてしまいそうになり、ギュッと目を瞑った。
ここで泣いたら、暁に私の気持ちが気付かれる…!
それだけは避けたい。
その時
急に腕を捕まれ、グイッと引っ張られた。
「わっ?!」
「あぶなっ」
ハッと顔を上げると、目と鼻の先に電柱が見えた。
「何してんの」
「ご、ごごめん…!」
電柱にぶつかるギリギリで、暁が私の腕を引いてくれたのだ。
本当に間一髪だった。
ただびっくりした事で、さっきまでの涙が引っ込んでくれた。
ナイス、電柱。ありがとう、電柱。
そして意識は、暁に掴まれている腕と引かれた事で近くなった距離に、嫌でも集中してしまう。
「ちゃんと前見て歩けよ」
私のすぐ頭上から聞こえる暁の声に、体が勝手にビクついてしまう。
(近い近い近い近いー!)
暁を好きだと意識したからなのか、有り得ないくらい心臓がドキドキしている。
この距離なら、暁にも聞こえてしまいそう…
今度は別の意味で、泣きそうになってきた。
でも、暁に彼女が出来ても、こうやって私を助けてくれて、距離感も変わらないという事に、少しほっとしている自分がいる。
ただそれは同時に、私が「ただの幼馴染」という事も突きつけられているのだった。
そんな事を考えている間に、掴まれた腕は離されて、暁はスタスタと私の前を歩いていく。
「何ぼーっとしてんの。行くぞ」
「…うん。」
歩きながら振り向いてくれている暁に、駆け寄っていき、さっきとは違って少し後ろを歩いた。
私は暁にとって「ただの幼馴染」。そんな私が今、隣りを歩いちゃいけないような気がしてしまったからだ。