クソ真面目なアイドルに、幼なじみの一途が重症です。
暁side
『口出ししないで!』
家の前でそう叫んで、ももが俺から逃げるように家に入ってから数週間。
ももからあんなに感情をぶつけられたのは、この長い付き合いの中で初めての事だった。
いまの俺たちの関係は、物心ついてから初めてというくらい、最悪なほど冷え切っている。
朝、家を出る時間が被っても、あいつは俺の顔を見るなりサッと目を逸らし、足早に駅へ向かってしまう。
放課後も「彼女さん絶対嫌がるから」と言い、俺の家に来ることもなくなった。
今まであった日常が、ガラッとかわってしまったのだ。
「口出しするな」と言われた手前、俺も意地になって話しかけるのをやめた。
俺には、夏祭りから付き合い始めた結衣という彼女がいる。
可愛くて、素直で、俺の隣でいつも楽しそうに笑ってくれる。彼氏として、俺なりに彼女のことは大事にしているつもりだ。
結衣と一緒にいれば楽しいし、癒される。
……それなのに。
最近の俺は、自分でも引くくらいずっと機嫌が悪かった。
「暁くん、聞いてる?」
昼休み。
結衣とお弁当を食べていると、不意に袖を引かれた。
「……あ、ごめん。聞いてるよ。週末の映画でしょ?」
「もう、最近ずっと上の空だよ?何かあった?」
「いや、そんな事ないよ。ごめん」
俺は結衣に向かって笑いかけ、彼女の髪をそっと撫でた。
結衣は嬉しそうに目を細める。
俺は彼女が好きだ。大事にしたいと思っている。
なのに、視線は無意識に、廊下へ続く教室のドアの方をチラチラと彷徨っていた。
(……あいつ、今日もあのチャラ男と一緒に昼飯食ってんのか)
ももが付き合い始めた、学校中で「遊んでいる」と有名なチャラ男。
あいつがあんな男と付き合うなんて、絶対に裏がある。
どうせバカ正直なもものことだから、上手く騙されて丸め込まれたんだろう。
拒絶された俺には、もうあいつを守ってやる理由も、口出しする権利もない。
頭では分かっているのに。
胸の奥にヘドロのように溜まった「イライラ」は、日を追うごとに膨らんでいくばかりだった。