クソ真面目なアイドルに、幼なじみの一途が重症です。

やっと見つけたグッズ販売の列は、見た事ないくらいに長蛇の列で、2人で愕然とした。
でも「並ぶんだろ」と、暁は私の手を引いて最後尾へとまた歩きだした。

「こんなに長いとは…ごめんね、暁。私買ってくるから、向こうで座ってて」

「いいよ、一緒にいる。並んでる間暇だろ」

「いいの?ありがとう」


こういう所が、優しいんだよな。
絶対に面倒なはずなのに、文句1つ言わずに一緒に並んでくれた。

列に並んでいる間、暁にMISSAのメンバーを紹介したり、イヤホンをつけておすすめの曲を聞いてもらったり、他愛もない会話をしながら順番がくるのを待っていると、本当にあっという間だった。

無事に念願のグッズを買い、会場に入るとドーム特有の空気感と広さと観客の多さ、そして装飾されたステージに、圧倒させられた。

「すっごーい!」

目に映る全てが圧巻で、会場全体の高揚感を肌で感じると、私のオタク心がウズウズしてくる。

暁も会場の雰囲気に「すごいな」と少しわくわくしてくれている様子だ。

そして自分達の座席に座り、いよいよもうすぐ始まるという中、私は無理やり暁にもペンライトをもたせた。

「暁!始まったらこれ振ってね!」

「いや、俺はいいって」

「これ持ってた方が絶対楽しめるから!」

そんなやり取りをしていると、バンッと会場が暗転し、爆音が鳴り響いて、ステージにMISSAのメンバーが登場した。

その瞬間。

「キャーーッ!! !!」

私は隣にいる暁の存在を忘れたかのように、完全に「ガチファン」の顔になって、黄色い声援を送り続けた。




「L・O・V・E! レイナ!!」

最推しのレイナに向かって、両手に持ったペンライトを曲に合わせて振りながら、完璧なコールを送る。

生で見る推しは本当にキラキラしていて、私は感動で泣きそうになりながらステージを見つめていた。

ふと、曲の合間のMCの時間になって
私が「はぁ、可愛すぎ……」と一息ついた時。

隣から、小さく吹き出すような声が聞こえた。

「……暁?どうしたの?」

私が横を見ると、暁はパイプ椅子に浅く座って頬杖をつきながら、すごく楽しそうに笑っていた。

「いや、ももの熱量がすごくて。お前、そんな動きできたんだなって感心してた」

「なっ…!からかわないでよ!ていうか、私の事なんか見なくていいから、ステージ見ててよ!」

私がステージの方を指差すと、暁は素直に「はいはい」と頷いた。

でも、その顔はやっぱり笑っていて。

「見てるよ。でも、ももが全力すぎて面白くて。なんか、可愛いなって」

「えっ……」

あきの少し低くて甘い声が、ライブの重低音に紛れてスッと耳に届いた。

頬杖をついたまま私を見るその目は、何万ものファンが熱狂している華やかなステージじゃなくて、汗だくでペンライトを振っている私だけを、真っ直ぐに、そしてすごく優しく映していた。

「何言ってんの!バカにしてるでしょっ!」

「してないって。ほら、次の曲始まるぞ。しっかり応援しろー」

暁はそう言って、私の頭をポンと撫でた。

(……可愛いって言った)

私は慌ててステージに向き直ったけれど、心臓が変なリズムで跳ねていて、さっきまでみたいに全力でコールができなかった。

華やかなアイドルのライブの最中。

隣を見れば、私のことばかり見て優しく笑っている幼なじみがいる。

彼にとっては、ただの「手のかかる幼馴染」を見るような、昔から変わらない愛情表現なんだろう。

でも、この時のあきの甘くて優しい眼差しは、私の心の中に「ただの幼なじみ」とは違う、小さな恋の種を確実に落としていったのだ。
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