再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
その日の仕事を終え、事務所を出た。
帰り際に来客対応が入ったせいで、いつもより三十分ほど遅い退勤になってしまった。
すでに空は暗くなり始めていて、少し早足でバス停へ向かう。
普段、乗らないバスの時間帯は込み具合が分からない。
バス停に着き、ソワソワしながら待っていた。
しばらくすると、バスがやって来て乗り込む。
思っていたよりも空いていて、後ろの窓際の席に腰を下ろす。
いくつかバス停を過ぎたところで、目的の一つ手前で降りた。
理由は、スーパーに寄りたかったからだ。
そのままマンションの最寄りのバス停まで行ってしまうと、一度通った道を引き返すことになる。
それが少しだけ面倒だった。
テツは今朝、グラタンが食べたいと言っていた。
けれど、当の本人は出張で、帰宅が二十時頃になるらしい。
【帰りになにか食べてきたら?】とメッセージを送ると、すぐに返信が来た。
【美桜の料理の方がいいから我慢する】
帰りが遅くなるならお腹が空くだろうと思って連絡しただけなのに、不意打ちすぎる。
そんなふうに言われたら、作らないわけにはいかない。
帰りにスーパーへ立ち寄り、足りない材料をいくつか買った。
レジで支払いを済ませ、買い物袋を手にスーパーを出ようとした瞬間、ふと視線を感じた。
足を止めて顔を上げると、買い物かごを手にした女性と目が合う。
少し空気が張り詰めた気がして、胸の奥がざわついた。
険しい表情を浮かべた彼女が、こちらへ向かって歩いてくる。