再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
私がデザイン事務所で働きだして一ヶ月が過ぎていた。

最初の頃は、周りの様子をうかがうばかりで、緊張の連続だった。
前は接客業だったので、人と話すこと自体は慣れていた。
だけど、新しい環境で人間関係を築いていくことは、思っていた以上に気を遣うものだった。

ようやく会社の雰囲気にも慣れ、同僚の人とも気軽に話せるようになった。
気づくと、みんなが私のことを下の名前で呼んでくれている。

恵利さんは私より三歳上のデザイナーで面倒見がよく、緑さんの次に仲良くなった人だ。

今日向かうのは、事務所から歩いて十五分のところにあるラーメン屋『宮脇丸(みやわきまる)』。
車で行けばもっと早いけど、私も恵利さんも車通勤ではないので、自然と歩きになる。
しばらく歩いていると、目的のラーメン屋が視界に入った。

「あっ、まだ外に五人ぐらいしか並んでないわ」

恵利さんが嬉しそうに言う。

「本当ですね」

店の外には数人の列ができていて、私たちもその後ろに並ぶ。

『宮脇丸』は平日でも行列のできる人気店だから、少し早めに出てきて正解だった。

この前、テレビで特集されていて、美味しそうだなと思っていた。
恵利さんも偶然同じ番組を見ていたらしく、それがきっかけで一緒に行くことになったんだ。

しばらく待っていたら、ようやく私たちの順番になり店の中に入る。
暖簾をくぐった瞬間、スープのいい匂いが鼻をくすぐった。
< 171 / 245 >

この作品をシェア

pagetop