再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
母が私のために、必死に働いてくれていたからだ。
朝早くから夜遅くまで働き、疲れているはずなのに、私の前ではいつも笑っていた。
そんな母を見て育ったから、私には分かることがある。
確かにお金は大切だ。
生活していくためには絶対に必要だし、お金があれば選べる道や諦めなくてもいいことも増えるだろう。
綺麗ごとかもしれないけど、幸せはお金だけで決まるものではないと思っている。
私は母からたくさんの愛情をもらった。
苦しいときもあったけど、二人で支え合いながら乗り越えてきた。
私自身も高校からアルバイトを始めた。
母の負担を少しでも減らしたかったし、家のためになればと思って働いた。
贅沢をせず、普通に暮らせるならそれで十分幸せだ。
だから私は、人を好きになるのは容姿や肩書きではなく、その人自身を見る。
「堂島さんは本当にテツのこと好きなんですか? 容姿と肩書きだけならテツじゃなくてもいいと思いますけど」
質問をぶつけてみたけど、彼女の答えを聞きたくて言ったわけじゃない。
私は堂島さんが口を開くより先に、言葉を続けた。
「申し訳ないけど、今さらテツを好きだと言っても、私と付き合っているので、堂島さんが入る余地はありませんよ」
そう言った瞬間、堂島さんがはっと息をのんだ。
意地悪な言い方だったかも知れないけど、これ以上引っかき回されたくなかった。
そのとき。
「その通りだ」
低く落ち着いた声が背後から聞こえた。