再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛から逃げられない~
婚約者という響きにはまだ慣れない。
それでも、テツに必要とされていることが嬉しくて、自然と口元が緩む。

そのとき、場の空気を変えるような、凛とした声が耳に届いた。

「こんなところにいたのか」

振り向くと、ネイビーのスーツを着こなした男性がゆったりとした足取りで歩み寄ってきた。
背筋は真っ直ぐに伸び、その姿には風格がある。
切れ長の目元が、どこかテツによく似ていた。

「あれ、うちの親父」

その一言に、慌てて姿勢を正す。

「あなた、美桜ちゃんよ。覚えてる?」

テツママに声をかけられ、彼の父親の視線が静かに私へ向けられる。
その瞬間、緊張が走った。
なにを言われるんだろうかと、思わず身構える。

「ああ、君が……。哲平の父の鳴海和孝(なるみかずたか)です」

「夏木美桜と申します」

丁寧に頭を下げた。

「美桜さんの話は聞いているよ。哲平が我儘を言っているみたいですまないね」

「いえ、とんでもありません。むしろ助けていただいてばかりで……」

テツがいなかったら、今の私はどうなっていたか分からない。

「……ところで」

彼の父親はゆっくりとテツへ視線を移した。

「二人はいずれ結婚するんだよな」

落ち着いた声に、自然と空気が張り詰める。

「そのつもり。じゃないと、こんな場所に美桜を連れてこないよ」

迷いなく言い切ると、テツは私の肩にそっと手を添えた。

「今日は、俺の婚約者として親父たちに紹介したかったんだ」

真っ直ぐな言葉に胸の奥が熱くなる。

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