無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「じゃあ……」

 少し身を乗り出して、テーブル越しに天音を真っすぐ見る。

 「俺が連れ出したの、正解でした?」

 問い方はいつもの調子と変わらないはずなのに、なぜか胸の奥がきゅっと縮む。

 「そう、なのかな」
 「寺崎さん、最初は嫌そうだったじゃないですか。予定外だし、知らない店だし、俺だし」
 「最後のはいらない」
 「それは光栄です。でも、今はそんな顔してない」

 指摘されて言葉に詰まる。自分がどんな顔をしているのか、考えたこともなかった。

 「さっき言いましたよね。変化があるのもいいって」

 幹人はグラスに残ったビールをひと口飲み、続ける。

 「それ、俺は……うれしかったです」

 思いがけず、真っすぐな声だった。

 「寺崎さんが〝いい〟と思った変化の中に俺が混ざってるなら」

 一瞬、時間が止まった気がした。
 入り込むでも、踏み込むでもない。『混ざってる』という言い方にドキッとした。
 距離が一気に縮まったように感じる。
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