無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 受け取ると、画面に写真が表示されている。細いフレームの眼鏡越しに穏やかな笑みを浮かべた男性だ。髪はきちんと整えられ、スーツの着こなしにも隙がない。安心という言葉が似合う顔。少なくとも、予定を壊してくるタイプではなさそうだ。

 「相手の方も、ちゃんとした家庭の人なんだ」

 正信が悪気なく言う。娘の幸せを思っての言葉で、疑いも押しつけもない。だからこそ、簡単に否定できなかった。職業、立場、将来性など条件が揃っているため反論しにくい。

 「断る理由、ないでしょう?」

 梢のそのひと言に、言葉が出てこない。
 たしかにそう。問題点は見当たらない。むしろ正解に近いと言ってもいい。
 無難で安定していて、両親が安心できる相手だ。

 (そういう道を選んできたはずなのに……)

 頭の片隅に、不意にべつの顔が浮かんだ。
 年下で勢いがあって、予定を崩してくる人。無難とはほど遠い人だ。

 (……なんで今、加地くんの顔なんて浮かぶの)

 首を振って慌てて追い出していると、「どうかしたの? 大丈夫?」と梢に心配されてしまった。

 「一度会ってみるだけでもどうだ」

 正信の声は穏やかだが、退路を塞ぐ力がある。
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