無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 淡々とした口調なのに、逃げ道がない。そのひと言で鼓動が強く揺れた。
 条件も理屈もない。ただ〝そうしたいから〟という理由だけが、真っすぐに差し出されている。
 天音は言葉を失ったまま、身動きが取れずにいた。

 「あけましておめでとうございます」

 唐突に言われて目を瞬かせる。

 「……それ、今?」
 「面と向かって言ってませんでしたよね」
 「ま、まぁそれはそうだけど……」

 メッセージでやりとりをしただけだった。それよりなにより、この状況はいろいろと困る。平静を装い、それとなく体勢を整えるが、幹人の腕はまだ天音の腰を抱いていた。

 「あの、もう大丈夫だから」
 「あ、すみません」

 幹人は今気づいたかのように両手をぱっと上げて離れた。
 彼が一歩退くと、さっきまであった体温がすっと引いていく。そのぶん、腰のあたりがひどく心許ない。
 要望通りに離れてくれたのに、なぜか少しだけ惜しいと思ってしまった自分に気づき、内心ぎょっとする。

 (なに考えてるの。落ち着いて)

 深呼吸しようとしたのに、うまく息が吸えないときた。
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