無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「前にちらっと話したと思いますけど、引っ越しが多かったから、あんま友達いなくて。作り方もよくわからないというか」

 それは胸の奥を突くような言葉だった。重たい告白ではないのに、軽く聞き流せない。
 歓迎会のときに、唯一の友達がカメレオンだと言っていたのを思い出した。あれは冗談ではなく、真面目な話だったのか。

 (だけど、言わなくてもいいことを、どうして私に?)

 かわいそうだと思ったわけじゃない。励ましたくなったわけでもない。
 ただ、今まで知らなかった一面を、ふいに手渡された気がした。
 職場では、年下らしからぬ落ち着きと要領の良さが目につく。どこか余裕があって、人との距離も測れているように見えた。
 だから孤独なんて、似合わないと思っていた。
 それが思い込みだったと気づいて、胸の奥が少しだけきゅっと縮む。
 幹人は特別な顔をしていない。ただ事実を述べただけ、という表情だ。

 「でも、鈴川くんとは仲がよさそうよね」
 「よく話しかけてはくれますけど、友達というのとはちょっと違うかな」

 ふたりが話しているのを何度か目撃しているが、たしかにそうだ。あくまでも大学の先輩後輩。一線引いているのが見ていてわかる。

 (この人、強がるのが上手なだけなのかもしれない)
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