無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
早いもので、もう六年目になる。
(やっぱり、ここでよかった)
エレベーターを降り、総務部がある八階のフロアに足を踏み入れるたびにそう思う。
想定外の出来事が起きにくく、日々が静かに積み重なっていく場所。天音にとってそれは、安心できる居場所そのものだった。
「おはようございます」
何人かと挨拶を交わし、自分の席に着く。パソコンを立ち上げ、今日の業務を確認していると、背筋の伸びる声がかかった。
「寺崎さん、おはよう」
「おはようございます、杉村さん」
声の主は天音の上司、杉村十和子だった。三十四歳、総務部総務課のマネジャーである。
観月建設には女性の管理職が何人かいるが、彼女もそのひとり。年齢よりも少し上に見えるのは、無駄のない落ち着いた所作と仕事に対する迷いのなさのせいだろう。
タイトすぎないジャケットをさらりと着こなし、きっちりと髪をまとめて、いかにも仕事ができる女風。きりっとした表情はクールだけれど、冷たいわけではない。必要なことを必要な分だけ、的確に伝える人である。
「昨日頼んでた備品の発注、確認した?」
「はい。今朝メールも来てました。納期も問題なさそうです」
「ありがと。午後は、会議室のレイアウト変更もお願いできる?」
(やっぱり、ここでよかった)
エレベーターを降り、総務部がある八階のフロアに足を踏み入れるたびにそう思う。
想定外の出来事が起きにくく、日々が静かに積み重なっていく場所。天音にとってそれは、安心できる居場所そのものだった。
「おはようございます」
何人かと挨拶を交わし、自分の席に着く。パソコンを立ち上げ、今日の業務を確認していると、背筋の伸びる声がかかった。
「寺崎さん、おはよう」
「おはようございます、杉村さん」
声の主は天音の上司、杉村十和子だった。三十四歳、総務部総務課のマネジャーである。
観月建設には女性の管理職が何人かいるが、彼女もそのひとり。年齢よりも少し上に見えるのは、無駄のない落ち着いた所作と仕事に対する迷いのなさのせいだろう。
タイトすぎないジャケットをさらりと着こなし、きっちりと髪をまとめて、いかにも仕事ができる女風。きりっとした表情はクールだけれど、冷たいわけではない。必要なことを必要な分だけ、的確に伝える人である。
「昨日頼んでた備品の発注、確認した?」
「はい。今朝メールも来てました。納期も問題なさそうです」
「ありがと。午後は、会議室のレイアウト変更もお願いできる?」