無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「わかりました」

 短いやり取りなのに、無駄がなくて心地いい。

 杉村は感情で仕事をしない。けれど部下を放置もしない。その距離感が天音にはありがたかった。
 ちょっと近寄りがたいと怖がる人もいるらしいが、天音にとっては頼れる上司である。
 曖昧な指示を出さず、判断も早い。一緒に仕事をしていると、余計な不安を抱かずに済む。

 総務の仕事は地味だ。備品管理、会議室の調整、社内からの問い合わせ対応。誰かの目立つ成果になることは少ないが、滞りなく回っている状態こそが正解である。

 (こういう仕事、やっぱり好きだな)

 安定していて予測できて、かつコントロールできる。昨日のような想定外とは無縁の場所なのがいい。

 「そうそう」

 自席に戻りかけた杉村が、ふと思い出したように足を止める。

 「来週から、インターンがひとり来る予定だから」
 「インターンですか」
 「ええ。まだ少し先だけど、事前に伝えておこうと思って」

 職業体験をするプログラム――通称インターンは、これまでも何人か総務部で受け入れたことがある。

 『総務部は裏方だけど、会社の心臓のような存在なのよ』
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