無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
帰宅すると、両親がうれしそうに天音を出迎えた。
なんだろうと思いながら、正信に言われるままソファにふたりと向かい合って腰を下ろす。
「どうしたの?」
マフラーを外しながらふたりを見た。
「例の話、日にちが決まったんだ」
そのひと言で用件がわかった。部下との顔合わせだ。
「さっきその方から連絡があったところなのよ」
梢は満面の笑みで正信と頷き合った。
「……そう」
「あら、なんだかうれしくなさそうね」
母の声はやわらかいのに、逃げ場がない。
天音はマフラーを畳みながら、曖昧に笑った。
「びっくりしただけ。急だったから」
「先方も忙しいからね。二週間後、日曜の午後でどうだって」
正信はそう言って手帳を閉じた。もう決定事項らしい。
「お相手、穏やかで真面目な方だそうよ。お父さんの部下の中でも評判がいいみたいなの」