無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 梢の言葉に、胸が小さくざわつく。お見合いで堅実な人と結婚するのは、天音にとってあたり前の話だったのに。

 「会うだけ、よね?」
 「もちろん。まずは顔合わせだ」

 正信は即答した。その『まずは』が、次になにを含んでいるのかを考えないようにする。
 部屋に戻るとスマートフォンが震えた。画面には、幹人からのメッセージが表示されている。

 【今日はありがとうございました。無事、帰れました?】

 ほんの数時間前に別れたばかりなのに、もう懐かしい気がする。

 【うん、今帰ったところ。今日は楽しかった】

 送信してから、少しだけ間を置く。

 【誘ってくれて、ありがとう】

 しばらくして、返事が来た。

 【こちらこそ。来てくれてうれしかったです】

 それだけのやり取りなのに、胸がふっと温かくなる。手を取られて階段を上った感覚が指先に蘇り、慌てて擦り合わせて誤魔化した。
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