無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 (やっぱり見られたんだ……! まさか加地くんに手を引かれて階段を上っているところ? それとも高い木の枝におみくじを結んでもらって、ドキドキしている場面? もしかしたら甘酒を飲んでほっこりしているところかも。どれにしても、いろいろとまずい……)

 あらゆるシーンを思い浮かべて、焦りは増すいっぽう。

 「あのですね、あれは加地くんが初詣にまだ行ってないって言うんで付き合っただけで、やましい関係とかではなく」
 「そんな慌てて弁明しなくてもいいわよ。仲がいいんだなって思っただけだし、付き合っちゃダメなんて決まりはないんだから。あ、付き合うって恋人としてって意味ね」

 杉村は天音の横顔をちらりと見て、口角をぐっと上げた。

 「ですから、付き合ってはいないんです」
 「そう? 年下ってね、こっちが先輩の顔してるうちは安全なのよ。でも、気づいたときには同じ目線。そうなったら、もう遅いの」

 ――もう遅い。
 その言葉が、耳の奥で遅れて反響した。
 なにが、だろう。慌てて弁明した自分のことか。それとも、ついさっきまでただの初詣だと言い聞かせていた気持ちのことか。
 階段で手を取られたときの感触が不意に蘇る。引かれる力も離れたあとの名残惜しさも、どれも〝先輩〟としては説明がつかない。

 (同じ目線……?)
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