無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 というのは、杉村の言葉だ。華やかさはないけれど、総務が機能しているから会社が安心して動ける。縁の下の力持ちであり、全体をつなぐ司令塔でもあるのだと。
 だからインターンが職業体験をするなら総務部が適しているという。会社全体を見通せるから。

 その考え方を、天音はとても気に入っている。

 前に出る仕事ではなくても、誰かの役に立っていると実感できる。目立たなくても、なくてはならない場所。そこに自分がいることに誇らしさを感じていた。
 安定して滞りなく回ること。問題が起きないことこそが成果だという総務の仕事は、天音の生き方そのものと重なっている。

 杉村の言葉は、そんな天音の選択を静かに肯定してくれている気がした。

 「わかりました。準備しておきます」
 「助かる。初日は私も立ち会うから、そんなに構えなくて大丈夫よ」

 杉村はそう言って、軽く手を振りながら自分の席へ戻っていった。

 「寺崎さーん」

 今度は背後から気の抜けた声がして、天音は振り返った。
 同じ総務部の同僚の男性が、コピー用紙を抱えたままこちらを見ている。

 「この備品リスト、前のフォーマットで大丈夫でしたっけ?」
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