無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 そう言いながら、壁に手をつく。
 天音は反射的に、彼の腕に手を伸ばした。

「ちょ、無理しないで。ふらついてる」
「……平気ですから」

 そう言って距離を取ろうとする仕草が、余計に痛々しい。

「鈴川くんに頼まれて、差し入れ持ってきたの」

 袋を持ち上げると、幹人は一瞬だけ目を伏せた。

「わざわざ、すみません」
「すみませんじゃないでしょ」

 つい声が強くなる。

「熱は? ある?」
「たぶん……でも微熱です」
「たぶんで済ませる状態じゃないから」

 玄関先の空気がひんやりしている。このまま立たせておくのは、どう考えてもよくない。

「入るわよ」
「え?」

 靴を脱ごうとすると、幹人が慌てて首を振った。

「いや、それは……」
「なに?」
「散らかってますし」
「今、そこ気にする?」
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