無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 言葉に詰まる幹人をよそに、天音は半ば強引に中へ入った。

 「こういうときは頼って」

 きっぱりと言うと、彼は観念したように小さく息を吐いた。

 「……すみません」

 弱々しい声だった。
 ワンルームの室内はたしかに散らかってはいたが、足の踏み場がないほどではない。
 机の上には資料とノートパソコン、床には読みかけの専門書が広げられている。ベッドの脇には、空になったカップ麺の容器が置いてあった。
 横になって休まず、課題に取りかかっていたのがひと目でわかる状態だ。
 鈴川は、幹人がこの状態なのを知っていたに違いない。

 「座って」
 「はい……」

 言われるがままベッドに腰を下ろす幹人の額に、そっと手を伸ばす。

 「……熱い」
 「大丈夫ですって」
 「大丈夫な人は、こんな顔してません」

 唇の色は薄く、目には力がない。無理に背筋を伸ばそうとしているせいで、かえって余裕のなさが滲んでいる。
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