無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 それだけ言って、視線を机の上に戻す。
 怖くないわけじゃない。でも、彼が大切にしている存在だということは、十分すぎるほど伝わってきた。

 「お粥とゼリー。今日はこれだけでいいから」
 「そこまでしてもらうつもりじゃ……」
 「今、温めるから黙って食べるの」

 ぴしっと言いきると幹人は少し驚いたように目を見開き、それから小さく笑った。

 「……逆らえないですね」
 「あたり前でしょ。先輩なんだから」

 そう言いながら、胸がざわつく。
 弱っている彼を前にすると、距離の取り方がますますわからなくなる。
 それでも今は考えない。彼を放って帰るなんて、できるわけがなかった。

 電子レンジの終了音が鳴る。湯気の立つお粥を取り出し、スプーンを添えてベッドのそばへ戻った。

 「はい。熱いから気をつけて」

 器を先に差し出したが、受け取る手元がおぼつかない。
 天音は一瞬迷ってから、スプーンを持ったままベッドサイドに腰を下ろした。

 「貸して」
 「自分で食べられます」
 「こぼしたら大変でしょ。ほら」

 幹人は、渋々天音に器を戻した。
< 145 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop