無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「……いいから。ちゃんと休んで」

 額にかかった髪を、そっと避ける。
 触れている時間が長くなりすぎないように、すぐに手を引いた。それでも胸の鼓動はしばらく収まらない。
 薬を飲ませ、熱を測りなおし、汗をかいた額を冷たいタオルで拭く。
 気づけば時計の針は午後八時をすっかり回っていた。

 「だいぶ下がってきたね」

 体温計を確認して、天音は小さく息を吐く。

 「帰らなくていいんですか」

 ベッドに横になったまま、幹人が掠れた声で言った。

 「この状態で置いて帰れないでしょう」
 「でも……」
 「でも、はナシ」

 きっぱり言って冷却シートを彼の額にピタッと貼ると、幹人はそれ以上なにも言わなかった。
 加湿器代わりにと鍋で沸かしたお湯の湯気が、部屋にうっすらと広がる。テレビはつけていない。時計の針が進む音だけが、やけに大きく感じられた。
 天音はベッド脇の床に座り、壁にもたれかかる。

 「眠れそう?」
 「……たぶん」

 返事は遅く、目はもう半分閉じている。
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