無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「じゃあ、少し寝て。私はもう少しここにいるから」

 そう言うと、幹人は小さく頷いた。しばらくして、呼吸がゆっくりと整っていく。
 眠ったのを確認してから、天音はようやく肩の力を抜いた。

 (よかった……)

 緊張が解けた途端、どっと疲れが押し寄せる。ベッドの縁に肘をついたまま、目を閉じた。
 

 ほんの少しのつもりだった。
 次に意識が浮上したとき、カーテンの隙間から街灯の光が差し込んでいた。

 (……あれ?)

 身体が妙に温かい。
 視線を下げると、幹人の手が天音の袖口を掴んでいた。
 無意識なのか、力は弱い。引き剥がそうとして、やめた。起こしたらかわいそうだ。
 彼の寝息は穏やかで、さっきまでの苦しそうな表情が嘘みたいだ。
 天音はそっと息を整える。夜の部屋は、来たときよりもなぜか狭く感じられた。

 (帰らないと……)

 そう思いながらも、身体は動かない。ほんの少しだけ、眠気に身を委ねる。
 次に目を閉じたとき、天音はもう自分が眠ってしまうことを止められなかった。
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