無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 どれくらい経った頃か。
 ――天音さん。
 遠くからそう呼ばれた気がして、天音はゆっくりと意識を浮かび上がらせた。

 (……え?)

 半分眠ったまま天井を仰ぐ。見慣れない白、ワンルーム特有の低い天井が目に入る。

 (ああ、加地くんの部屋)

 そこで、さっきの声を思い出す。

 (でも、今の)

 下の名前で、呼ばれたような。
 いや、そんなはずはない。幹人はいつだって名字呼びだ。一度だってそれを崩したことはない。

 (寝ぼけたな)

 そう結論づけたところで、すぐ近くから声がした。

 「寺崎さん」

 はっきりと、聞き慣れた呼び方だった。
 ベッドサイドに幹人が腰をかけている。昨夜より顔色は幾分ましで、けれどまだ本調子ではなさそうだ。

 「もう朝になっちゃいましたけど……時間、大丈夫ですか?」

 続いて出た言葉に、天音は完全に目が覚めた。
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