無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます

 出社すると総務部はいつも通りの朝だったが、天音の心の中だけは少しざわついている。
 席に着いたところで、背後から声が飛んできた。

 「おはよ、寺崎」

 振り向くと、鈴川が右手を軽く上げながら近づいてきた。

 「おはよう」

 挨拶を返してから、天音は間を置かずに言う。

 「ねえ、鈴川くん」
 「なに?」
 「加地くんが風邪引いてたの、知ってたでしょ」

 一瞬、鈴川は目を泳がせ、それから「はは」と短く笑った。

 「まあ……薄々?」
 「やっぱり」
 「そこまで重いとは思ってなかったんだけどさ。課題も大詰めって聞いてたし、あいつ、そういうとき絶対無理するタイプじゃん」
 「だったら、なおさら」
 「俺が行けばよかった?」

 被せるように言われて、天音は言葉に詰まる。

 「……そういうわけじゃないけど」
 「故意に寺崎を行かせたわけじゃないからな?」
 「うん、わかってる」

 わざとだったら大問題だ。
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