無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 会話が、それ以上広がらない。
 幹人は数秒迷ってから、続けた。

 「もしよければ、今日お昼――」
 「今日は杉村さんと一緒なので」

 言葉を最後まで言わせず、天音はきっぱりとそう言った。

 「……あ、そうなんですね」
 「ええ」

 それだけ言うと、天音は再びパソコンに視線を戻す。完全に仕事の顔だ。
 その背中を前に、幹人は立ち尽くすしかなかった。
 心当たりを探すが、なにも思いあたらない。
 看病してもらった翌朝も、ちゃんと礼は言った。その後も、失礼なことをした覚えはない。それなのに――。

 (なんで急に……)

 小さな違和感が居座る。
 素っ気ない態度は偶然なのか。それとも自分がなにかを間違えたのか。幹人には、まったく見当がつかなかった。
 ただひとつわかっているのは、あの夜、たしかに近づいたはずの距離が、また少し遠ざかっているということだけだった。
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