無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます

 昼休みになると、天音は職場から徒歩五分の場所にあるラーメン屋へ向かった。
 たいていお弁当を持参しているが、毎週水曜日だけは例外。お気に入りのラーメンを食べる日と決めている。
 昼時はオフィスワーカーたちで賑わうけれど、回転が早く、なにより味がいい。

 暖簾をくぐると、ふわりとスープの香りが鼻をくすぐる。いつも座るカウンターを見て、天音は足を止めた。

 (満席だ……)

 やむを得ず空いているふたり掛けのテーブル席に腰を下ろす。少し落ち着かないが、昼休みの時間は限られているため、席が空くのを待ってもいられない。
 メニューを見るまでもなく、注文は決まっている。

 (今日もタンタンメン)

 そう思った矢先だった。

 「ここ、空いてますよね?」

 返事を待つ間もなく、向かいの椅子が引かれる。顔を上げた瞬間、天音は大きく目を見開いた。

 「カ、カメレオン!」

 声に出してから、はっとする。店内の視線が一瞬だけ集まり、天音は慌てて口を押さえた。
 ペットショップでカメレオンを追いかけていた、ちょっと風変わりな人だったのだ。
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