無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 杉村は言葉を切り、窓の外に一瞬だけ視線を投げたあと、また天音を見る。

 「それ、今のタイミングで必要なことなの?」

 どきり、と胸が鳴る。天音はようやく顔を上げた。

 「どういう意味ですか」
 「無理に進めているように感じたから」

 杉村は肩をすくめる。
 天音の喉が、ひくりと鳴った。たしかにその通りだったからだ。

 「逃げてるように見える」

 責める響きはない。でも、核心だけは外さない。
 天音は黙ったまま、クラブハウスサンドを見つめる。

 (……逃げてる)

 その自覚があるから、なにも言えない。
 杉村はそれ以上追及せず、穏やかに言った。

 「答え、急がなくていいわ。でもね」

 いったん間を置いて続ける。

 「後悔しないほうを選びなさい」

 その言葉が胸の奥にやけに強く迫り、すぐには形にならずに沈んでいく。

 (後悔しないほう……)
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