無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 幹人は一歩、距離を詰めた。逃げ道を塞ぐように、それでいて決して触れない距離で。

 「寺崎さんが、好きだからです」

 頭の中が、一瞬真っ白になる。

 (……え?)

 幹人は言葉を続けた。

 「ほんとは社会人になって、寺崎さんとちゃんと対等になってから言おうと思ってました。 中途半端な立場で、気持ちを押しつけたくなかったから」

 それでも、と声を落とす。

 「お見合いするって聞いて……もう、待っていられませんでした」

 夕方の人通りの中で、時間が止まったみたいだった。
 こんなふうに想われていると、考えもしなかったわけじゃない。でも、はっきり言葉にされると、胸が痛いほど熱くなる。

 「私……」

 天音は、ゆっくり息を吸った。

 「怖かったの」

 自分でも驚くほど、素直な声が漏れる。
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