無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
付き合いはじめて一週間、天音の景色は大きく変わらなかった。少なくとも、表向きは。
職場ではこれまで通り、指導者とインターン。業務連絡は簡潔に、私語は控えめ。呼び方も変えていない。
それでも資料を受け渡すときに目が合う。すぐに逸らすのに、ほんの一瞬だけ互いに気づいたことが伝わる。
(今、笑った)
パソコンの画面に視線を落としながら、天音は小さく息を整えた。
社内恋愛なら新入社員の頃に一度だけあるが、またこんな経験をするなんて少し前の自分なら考えもしなかった。
幹人に告白され、自分も想いを打ち明けたあの夜、天音は両親に『好きな人がいる』と、お見合いの話を断った。
最初は驚いていたふたりだが、相手に失礼だし、それなら無理に進めるわけにはいかないと納得してくれた。ただ天音はまだ、相手が四つ年下の学生だとは言えずにいる。
それもあと二カ月もすれば解消するから問題はないだろうけれど。
いっぽう理世のほうは、『ほら、やっぱり』という反応だった。どこかで予感していたと言うから驚きだ。
その日の夕方、杉村に声をかけられた。
「今日、時間ある?」
「はい」
「じゃあ、飲みに行きましょ。たまには付き合って」