無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 彼の隣に立つとき、年齢でも立場でもなく、同じように前を向いていたい。遠くなる距離を嘆くより、自分も前へ進めばいい。
 天音は、ゆっくりと息を吸い込んだ。

 「お受けします」
 「そう、よかった。今の寺崎さんなら、そう言ってくれると思ったわ」

 ミーティングルームを出て、自席に戻る途中、廊下の向こうで誰かに呼び止められた幹人が立ち止まるのが見えた。
 こちらには気づかない。それでも天音はそっと決意する。

 (追いかけるんじゃない。一緒に進む)

 キーボードに指を置きながら、天音は静かに未来を選んだ。
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