無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
その日、帰宅すると珍しい人の姿があった。
「天音~! 久しぶり~!」
自由奔放を絵に描いたような、三つ年の離れた姉の咲楽である。リビングから顔を覗かせるなり、玄関まで両腕を広げて小走りにやって来た。天音に抱きつき、再会の喜びを露わにする。
どれくらいぶりだろうか。ふらりと帰ってきては、またすぐに出ていくため、いつ来たのか定かでない。
「お姉ちゃん、苦しいってば」
「はいはい。……あれっ? なんか雰囲気変わった? なになにオセロはどうした、オセロは」
ぱっと引き剥がした天音を上から下まで眺めて、目を激しく瞬かせる。
両親と天音が黒白ばかり着ているものだから、昔よく咲楽は『オセロだ』と言って茶化していたのだ。この日の天音は、コーラルピンクのブラウスに白いスカートを合わせていた。
対して咲楽は、ロイヤルブルーのジャケットの下に黒いタンクトップ、ダメージジンズを合わせた派手めのスタイル。ゴールドの三連バングルが、ジャラジャラと音を立てた。
「ははーん、さては男だな。天音にも彼氏ができたってわけだ」
「もう、からかわないで」
目を細くして天音を見る咲楽を嗜めて、足を進める。
「お父さんとお母さんは?」