無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 梢がため息混じりに言う。

 「お相手は、どんな人なの?」
 「普通の人。面白いことは言わないけど、変に振り回されない」

 そう言ってから、ふっと笑った。

 「たぶん、私にはそれくらいがちょうどいい」
 「おめでとう、お姉ちゃん」
 「ありがとう」

 咲楽はうれしそうに目を細める。

 「天音に一番に言いたかったから、帰ってきたんだよ」

 胸が少しだけ温かくなる。それと同時に、べつの感情がじわりと滲んできた。
 姉が結婚する。それは、どこか遠い世界の話だと思っていた出来事が、急に現実として目の前に現れたということでもあった。

 「咲楽が結婚ねぇ」

 母はしみじみと言う。

 「天音も、そろそろ考える年頃でしょう?」

 話題が、自然とこちらへ流れてくる。

 「……どうだろう。まだ実感ないかな」

 天音は曖昧に笑った。
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