無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「なに言ってるの。この前お見合いを断ったでしょう? 好きな人がいるって。もうすぐ二十九歳になるんだし、当然そういう話になってるのかと思って」

 正信も、うんうんと頷いている。
 天音は、思わず曖昧に笑った。誕生日は三日後。いよいよ二十代も最後の年になる。

 「そんな、すぐじゃないよ……」

 自分でも、逃げの返事だとわかる。
 両親には詳しく話していないが、幹人はまだ二十四歳。仕事を覚えるので精一杯で、結婚なんて現実的に考えていないだろう。
 そこに「将来はどう考えてるの?」なんて言葉を投げるのは、違う気がする。重荷にはなりたくない。
 そう思ういっぽうで、胸がざわつく。
 言葉に詰まる天音を見て、咲楽が箸を置いた。

 「まぁまぁ」

 咲楽が割って入る。

 「天音は、私と違ってちゃんとしてるから」
 「それ、褒めてる?」

 天音が苦笑すると、咲楽は「もちろん」と即答した。

 「ちゃんと考えて、ちゃんと悩むでしょ。この子は」

 考えていないわけじゃない。ただ、答えがまだ見えないだけだ。
 結婚だけが幸せの形じゃない。そう思えるようになったのは、たしかに成長だ。
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